思春期・二次性徴と身長 ―「伸びる時期」と「終わりのサイン」を知る―
身長のご相談で、保護者の方からとても多くいただく質問があります。「うちの子は、まだ伸びますか?」「もう遅いのでしょうか?」というものです。
この判断に深く関わっているのが、思春期と二次性徴です。身長の伸び方は、成長期を通して一定ではありません。ぐんと伸びる時期があり、やがて落ち着き、止まる時期が来ます。そのどこに今いるのかを知ることが、「まだ伸びるのか」を考える第一歩になります。
このコラムでは、思春期の体に起こる変化と身長の関係を、できるだけ分かりやすくお話しします。お子さまの今の状態を見つめ直すきっかけになれば幸いです。
目次
思春期とは、体が大きく変わり始める時期です
思春期は、子どもから大人へと体が変化していく時期です。脳からの指令によって性ホルモンや成長ホルモンの分泌が活発になり、身長だけでなく、体つきや心の状態にもさまざまな変化が現れます。
開始時期には個人差があります。一般的には、女の子で小学校中学年から高学年(8〜10歳ごろ)、男の子で小学校高学年から中学生(10〜12歳ごろ)に始まることが多いとされます。女の子のほうが、男の子よりも2年ほど早く始まるのが通常です。ただし、早い子もいれば遅い子もいて、それ自体が異常というわけではありません。
思春期は、成長のラストスパートとも言える大切な期間です。子どもの頃はゆるやかだった身長の伸びが、この時期に一気に加速します。一方で、思春期は「成長が終わりに向かい始める時期」でもあります。性ホルモンは身長を伸ばす力を持つ一方、骨の成熟を進めて、成長の終わりを近づける働きも持っているためです。
つまり思春期は、「大きく伸びるチャンス」と「成長の残り時間が減っていく期間」が同時に進む時期です。この二つの側面を知っておくことが、とても大切です。
二次性徴は「成長が進んでいるサイン」です
二次性徴とは、思春期に現れる体の変化のことです。お子さまの体の中で、思春期のスイッチが入っているかどうかを、外から見て知る手がかりになります。
女の子の場合は、次のような順序で変化が現れるのが一般的です。
- 乳房がふくらみ始める
- 陰毛や脇毛が生える
- 初経(最初の月経)を迎える
男の子の場合は、次のようになります。
- 精巣(睾丸)が大きくなり始める
- 陰毛が生える
- 声変わりやひげなど、大人に近い体つきになる
これらの変化は、成長が順調に進んでいるサインです。ただし同時に、身長の伸びが後半に近づいているサインでもあります。
身長との関係でいうと、女の子では乳房がふくらみ始めてからあまり間を置かずに、身長が大きく伸びる時期(成長スパート)を迎えるのが一般的です。初経は、その伸びのピークを過ぎたあとに来ることが多く、初経後に伸びる身長は、一般的に数センチから、多くても10センチ弱程度とされます。
男の子では、精巣が大きくなり始めてから約1年程で、成長スパートが始まるとされています。声変わりは成長スパートの後半から終盤に起こることが多い変化です。「声変わりが始まったから、これから大きく伸びる」というわけではなく、むしろ「伸びの終盤に入ってきた」と考えるのが一般的です。
ご家庭で目安にされる場合は、こうした順序を知っておくと、お子さまの段階を捉えやすくなります。
身長が大きく伸びるのは、思春期の前半です
身長は、思春期に入ってすぐの時期に最も伸びやすくなります。この時期は「成長スパート」と呼ばれ、1年間に8〜10cm程度、人によってはそれ以上伸びることもあります。思春期前の子どもの1年あたりの伸びが4〜6cm程度であることを考えると、いかに大きな変化かがお分かりいただけると思います。
成長スパートのピークが来る時期にも、男女差があります。一般的には、女の子は11歳前後、男の子は13歳前後にピークを迎えることが多いとされます。ここでも、個人差は小さくありません。
注意したいのは、ピークを過ぎると、伸びは徐々に落ち着いていくということです。二次性徴が進むにつれて、1年あたりの伸びは少しずつ小さくなり、やがて止まります。
思春期の前半と後半では、伸び方が大きく異なります。前半は「大きく伸びる時期」、後半は「ゆっくり伸びて止まる時期」です。同じ思春期でも、今どちらにいるのかで、これから期待できる伸びしろは大きく変わります。
ご家庭では、お子さまの身長を定期的に測って記録しておくことをおすすめします。成長曲線に記入していくと、伸びが加速しているのか、落ち着き始めているのかが、数字や線の傾きとして見えてきます。
骨の成長には「終わり」があります
身長が伸びる仕組みを、少しだけ詳しくご説明します。
骨には、「骨端線(こったんせん)」と呼ばれる軟骨の層があります。子どもの骨は、この骨端線で新しい骨が作られることで、少しずつ長くなっていきます。身長が伸びるとは、この骨端線が働き続けているということです。
思春期が進むと、性ホルモンの働きによって骨が成熟し、骨端線は徐々に薄くなって、やがて閉じてしまいます。一度閉じると、その骨がそれ以上長くなることはありません。つまり、骨端線が閉じたあとに、身長が大きく伸びることは期待できないのです。
骨端線が閉じる時期は、一般的に女の子で14〜16歳ごろ、男の子で16〜18歳ごろとされますが、これも個人差があります。
ここで大切なのが、骨端線が閉じていく順序です。骨端線は、手や足の先から体の中心に向かって、徐々に閉じていきます。そのため当院では、手のレントゲンに加えて、体の中心部にあたる骨盤の骨端線も確認し、身長がまだ伸びる可能性を評価しています。
お子さまのご年齢や状況に合わせて、適切な検査と治療を行っていくことが大切です。
たとえば、同じ12歳のお子さまでも、骨端線がまだ多く残っている子と、すでに閉じ始めている子とでは、残されている成長の時間が大きく異なります。見た目や年齢だけでは分からない成長の段階を、客観的に知るための方法の一つです。
体の変化が進むほど、残された成長の時間は少なくなっていきます。この点を知っておくことは、お子さまの将来を考える上で、大切な視点です。
「身体つきが変わってきた」は大切なサインです
最近、こんな変化に気づくことはありませんか。
- 急に体つきが大人っぽくなった
- 周囲から「思春期っぽくなったね」と言われるようになった
- 以前よりも食欲が増えた
- 靴や服のサイズが、短期間で合わなくなってきた
- 汗やにおいが気になるようになった
こうした変化は、ホルモンの分泌が活発になっているサインです。思春期が始まっている、あるいは進んでいると考えられます。
身長の伸びを考えるうえでは、思春期がどの段階にあるのかを把握することがとても重要です。ここで気をつけたいのは、「背が高い=まだ伸びる」「背が低い=これから伸びる」とは限らないという点です。
思春期の始まりが早い子は、一時的に周囲より背が高くなりますが、その分、成長の終わりも早く来ることがあります。逆に、思春期の始まりが遅い子は、周囲より小さく見えても、これから大きく伸びる余地を残していることがあります。
また、思春期の始まりが早すぎる、あるいは遅すぎる場合は、背景に治療が必要な状態が隠れていることもあります。心配な場合は、専門の医療機関にご相談ください。
目に見える変化は、体の内側で起きていることの「ほんの一部」です。身長だけでなく、体つきの変化や成長のペースを、あわせて見ていくことが大切です。
思春期の成長が終わる前に、知っておくべきこと
身長を伸ばす治療を始めるかどうかは、ご家庭ごとの判断です。お子さまご本人の気持ち、ご家族のお考え、費用や通院の負担など、さまざまな要素を踏まえて決めていただくべきことだと考えています。
ただし、身長に関わる治療には、お伝えしておきたい「タイミング」があります。成長の時間には限りがあり、骨端線が閉じたあとにできることは限られてしまうからです。
そこで大切にしていただきたいのが、思春期が進み、体の成長が終わる前に、現在の成長段階や、将来の伸びしろについて知っておくことです。
- 今の身長は、同年代の中でどのあたりか
- これまでの伸び方は、どのように推移しているか
- 思春期は、今どの段階にあるのか
- 骨端線の状態から見て、まだ伸びる可能性がどのくらい残っているか
- このままだと、最終的にどのくらいの身長が見込まれるか
こうした情報を知った上で、「治療をする」「経過を見る」のどちらを選ぶにしても、納得して選ぶことができます。逆に、何も知らないまま時間が過ぎてしまい、あとから「あのとき確認しておけばよかった」と思われることは、私たちとしても避けたいことです。
「身長が低くないから、相談するほどではない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現在の身長にかかわらず、「もっと伸びてほしい」と願うお子さまやご家族は、決して少なくありません。そうしたお気持ちに、私たちは真摯に向き合っています。
まずは、お子さまの現在地を知ることから始めてみませんか。
まとめ
今回のコラムでは、思春期・二次性徴と身長の関係について、お話ししてきました。ポイントを整理します。
- 思春期は、成長のラストスパートであると同時に、成長の終わりに向かい始める時期でもある
- 二次性徴は、成長が進んでいるサインであり、伸びが終盤に近づいているサインでもある
- 身長が最も伸びるのは、思春期の前半。後半は、伸びが徐々に落ち着いていく
- 身長は、骨端線が閉じるまで伸びる。一度閉じると、大きな伸びは期待できない
- 体つきの変化は、思春期の段階を知るための大切な手がかりである
- 治療を受けるかどうかはご家庭の判断。ただし、成長が終わる前に、現在地と伸びしろを知っておくことが大切である
「まだ伸びますか?」「もう遅いでしょうか?」というご質問への答えは、お子さまお一人おひとりで異なります。年齢や身長の数字だけでは判断できず、思春期の段階や骨の成熟度などを、総合的に見ていく必要があります。
お子さまの成長について、少しでも気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。


