平均身長でも相談できる?「もう少し伸びてほしい」「大きくなりたい」という気持ちとの向き合い方
「うちの子は低身長というほどではないけれど、もう少し背が伸びてほしい」。「スポーツをしているので、もっと大きくなりたい」。診療の場では、そうしたお気持ちをお持ちのご家庭と、数多くお会いしています。
一方で、「平均的な身長なのに、相談してもよいのだろうか」「低身長でないのに、病院に行くのは大げさではないか」と、ためらっておられる方も少なくないように感じます。保護者の方だけでなく、お子さま自身が「もっと大きくなりたい」と思いながらも、その気持ちを口に出せずにいることもあります。
結論からお伝えすると、低身長でなくても、身長のことでお悩みであれば、ご相談いただいてよいと考えています。
この記事では、「低身長」とはどのような状態を指すのか、平均身長でも相談してよい理由、そして「もう少し伸びてほしい」というお気持ちとの向き合い方について解説します。お子さまの身長について、真剣に考えたいとお思いのご家庭に向けて書きました。
目次
「低身長」とは、どのような状態を指すのか
まず、「低身長」という言葉の意味を整理しておきます。
低身長とは、同じ性別・同じ年齢のお子さまたちの平均身長と比べて、著しく低い状態を指します。一般的には、平均からの隔たりを表す「標準偏差(SD)」という指標を使い、「-2SD」以下の場合を、低身長の目安としています。
-2SDという基準は、同じ年齢・性別のお子さま100人が身長の順に並んだとき、低いほうから2〜3人目あたりにあたる位置です。つまり、低身長に当てはまるお子さまは、全体のごく一部ということになります。
では、-2SDに当てはまらないお子さまは、どのような状態でしょうか。ほとんどのお子さまは、「平均」から「やや低め」「やや高め」までの、広い範囲の中にいます。この範囲にいるお子さまが、「もう少し伸びてほしい」と感じたとしても、決して不自然なことではありません。
ここで一つ、知っておいていただきたいことがあります。身長でお悩みの場合に、「保険診療で治療できるのでは」と考える方もいらっしゃいます。しかし、保険診療での治療に進むには、さまざまな条件を満たす必要があります。-2SDを下回っていても、ホルモン値などの検査で「異常なし」と判断されると、保険診療での治療に進めないことは少なくありません。まして、-2SDに当てはまらない場合は、なおさらです。
つまり、身長のお悩みの多くは、「低身長ではない」「検査で異常がない」という理由で、治療を検討する手立てがないまま、残されてしまいがちなのです。
平均身長でも「もう少し伸びてほしい」と思うのは、自然なことです
身長を気にされる理由は、ご家庭によってさまざまです。
- スポーツをしていて、体格が競技に影響すると感じている
- 周りのお友達と比べて、小さいことが気になっている
- お子さま自身が、「もっと大きくなりたい」と話している
- 将来の身長について、ご家族として心配がある
これらは、いずれも、お子さまやご家族にとって、大切なお悩みです。
特にスポーツをされているお子さまの場合、身長や体格は、競技によっては大きな意味を持ちます。バスケットボールやバレーボール、サッカーなど、体の大きさが有利に働く場面では、「もう少し大きければ」という思いが、練習への意欲や、将来の夢にも関わってきます。
身長のお悩みは、数字が平均の範囲にあるかどうかで、重さが決まるものではありません。「低身長ではないから、悩んではいけない」ということは、決してないのです。
当院の院長は、自身も子を持つ親であり、また、スポーツの指導者として、身長にお悩みのお子さまと接してきた経験があります。そうしたなかで、低身長でなくても、身長でお悩みの方が数多くいらっしゃることを、実感してきました。だからこそ、身長でお悩みの方には、できる限り寄り添いたいと考えています。
相談のタイミングは「低身長になってから」ではありません
身長の相談は、「低身長と言われてから」と考えておられる方も多いかもしれません。しかし、お子さまの成長には、時間の制限があります。
以前のコラムでもご紹介しましたとおり、身長は、骨の端にある「骨端線(成長線)」が閉じるまで伸び続けます。骨端線が閉じる時期の目安は、一般的に、女の子で14〜16歳ごろ、男の子で16〜18歳ごろです。思春期が進むにつれて、骨端線は少しずつ閉じていき、閉じたあとは、身長が大きく伸びることは期待できません。
つまり、身長に関わる治療には、「タイムリミット」があります。「低身長と診断されてから考えよう」と待っているうちに、成長の時間が少なくなってしまうこともあるのです。
また、ずっと治療を続けられるわけでもありません。治療は、お子さまの成長の時間の中で行うものです。だからこそ、「今できることを、今のうちに」という考え方が大切になります。
もちろん、「相談しなければ手遅れになる」ということではありません。お子さまの現在の状態と、これから期待できる伸びしろを知ったうえで、治療を行うかどうか、経過を見るかどうかを、ご家庭で落ち着いて考えていただく。そのためには、時間に余裕があるうちに、現状を把握しておくことが役立ちます。
思春期の進み具合や骨端線の状態は、見た目やご年齢、身長の数字だけでは分かりません。同じ年齢でも、成長の段階はお子さまごとに異なります。現在の状態を知ることは、選択肢を考えるための土台になるのです。
当院でできること ― お子さまの「現在の状態」と「これから」を確認します
当院では、身長でお悩みのお子さまとご家族に向けて、診療を行っています。低身長でなくても、「身長を伸ばしたい」とお考えのお子さまが対象です。
まず、初診のカウンセリングで、お子さまの現在の状態を確認します。院内で身長と体重を測定し、問診票をもとに、これまでの身長の推移や、思春期の進み具合などを伺います。初診の流れについては、以前のコラムで詳しくご紹介しています。
必要に応じて、画像検査も行います。お子さまのご年齢や思春期の進み具合を見たうえで、手のレントゲンや、骨盤部のCT検査をご案内します。これらの検査では、骨端線の状態を確認し、身長がまだ伸びる可能性を評価します。
検査の結果や、身長の推移、思春期の進み具合などを踏まえて、現在の成長の状態と、今後の見通しをご説明します。そのうえで、治療を行うか、経過を見るかを、ご家庭で選んでいただきます。
なお、カウンセリングや検査を受けたからといって、治療を始めなければならないわけではありません。お子さまの状態を知ったうえで、ご家庭が納得して決めていただくことが大切だと考えています。
治療を考えるときに、知っておいていただきたいこと
実際に治療を検討される際に、あらかじめ知っておいていただきたいことを、お伝えします。
◆ 当院の診療は、自費診療です
保険診療での治療は、先ほどお話ししたとおり、-2SDを下回り、かつ、ホルモン値などの検査で異常が指摘された場合に限られ、条件は厳しいものです。そのため、お悩みがあっても、保険診療では治療に進めないお子さまが多くいらっしゃいます。
当院の診療は自費診療であり、「身長を伸ばしたい」とお悩みのすべてのお子さまを対象としています。その分、治療にかかる費用は、ご家庭のご負担となります。
◆ 治療には、負担や注意点もあります
治療には、費用だけでなく、通院の負担もあります。また、治療に伴う注意点やリスクもあります。当院では、治療中は定期的に血液検査を行い、お子さまの体の状態を確認しながら、安全に配慮した診療を心がけています。
◆ 治療による伸びは、お子さまごとに異なります
治療でどのくらい伸びるかは、お子さまの年齢、思春期の進み具合、骨端線の状態などによって異なります。すべてのお子さまに同じ効果が得られるわけではなく、効果をお約束することはできません。
治療による伸びが見込みにくいと考えられる場合もあります。そのような場合でも、お子さまや保護者の方のお気持ちには、十分に配慮した対応を心がけています。現在の状態や、治療に期待できることを、正直にお伝えしたうえで、今後の進め方をご一緒に考えていきます。
だからこそ、ご家庭でよく話し合い、納得したうえで、治療を行うかどうかを決めていただくことが大切です。
お子さまと一緒に考えるために ― 気持ちとの向き合い方
身長のお悩みと向き合ううえで、大切にしていただきたいことがあります。
◆ まず、お子さまご自身の気持ちを聞いてみる
お子さまが身長のことをどう感じているのか。気にしているのか、あまり気にしていないのか。ご家庭で、一度お話ししてみてください。「もっと大きくなりたい」という思いがあるのか、それとも保護者の方が心配されているだけなのかで、治療への向き合い方は変わってきます。
お子さまご自身が前向きなお気持ちをお持ちのほうが、通院や治療にも取り組みやすくなります。お子さまのお気持ちは、できるだけ大切にしていただければと思います。
◆ 身長についての声かけに、気をつける
身長のことで悩んでいるお子さまに、「小さいね」「もっと食べなさい」といった言葉が、プレッシャーになってしまうことがあります。身長をお子さまの欠点のように扱うのではなく、「どう思っているの?」「どうなりたい?」と、お子さまの気持ちに耳を傾ける姿勢が大切です。
◆ 一人で抱え込まず、ご家族で話し合う
保護者の方が、お一人で悩みを抱え込んでしまうこともあります。治療を行うかどうかは、ご家庭の判断です。保護者の方が治療を決断されたのであれば、当院は診療をお受けします。そのうえで、お子さまにもご家族の考えを伝え、一緒に進めていくことが望ましいと考えています。
身長がすべてではありません。しかし、お悩みを抱えているお子さまやご家族のお気持ちには、きちんと向き合うべきだと考えています。
まとめ
今回は、平均身長でも相談できるのか、「もう少し伸びてほしい」というお気持ちとどう向き合うかについて、お話ししました。ポイントを整理します。
- 低身長は、一般的に「-2SD」以下を目安とする。多くのお子さまは、低身長の基準には当てはまらない
- 保険診療では、-2SDを下回り、かつ検査で異常が指摘されないと治療に進めず、条件は厳しい
- 低身長でなくても、「もう少し伸びてほしい」「大きくなりたい」というお悩みは、相談してよいもの
- 身長に関わる治療には、タイムリミットがある。現在の状態を知っておくことが、選択肢を考える土台になる
- 当院は自費診療で、身長を伸ばしたいすべてのお子さまが対象。治療による伸びはお子さまごとに異なり、効果はお約束できない
- 治療を行うかどうかは、ご家庭の判断。お子さまご自身の気持ちも大切にしたい
身長のことでお悩みのお子さまとご家族に、できる限り寄り添いたい。それが、当院の変わらない思いです。お子さまの将来の身長について、真剣にお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。


